トピックス【従業員への損害額請求可否】 - Hikarie社会保険労務士事務所

TOPICS -例外・留意事項-

◆従業員への損害額請求可否

ポイント

 事業活動を行う上において、従業員が安全運転を怠り、事故を起こしまった場合、会社は従業員に対して修理費などの損害額を 請求することができるのでしょうか。
 労働契約を締結する際、現実に生じた損害を請求することは禁止されておりませんので(昭和22年9月13日 発基17号)、 繰り返し事故を起こすなど従業員側にも過失があるような場合は、実際の損害額について請求することは可能とされています。
 しかし、会社は従業員の労務提供により事業を営み、利益を上げていることから、原則として従業員に対して実際の損害額を そのまま請求することは難しく、仮に従業員に過失が認められる場合であっても、損害賠償の請求額は、一定の範囲で制限される と考えることが相当となります。
 そのため会社は、そもそも従業員が事故を起こさない予防策として安全運転教育を徹底するとともに、実際に事故が発生した 際には事故報告書を提出させたり、会社から指導書を交付するなどの対応策をとることが求められます。
 過去の裁判例を見てみると、業務遂行上において従業員に相当な過失がある場合であっても、損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と 認められる限度において請求することができるとされています(茨城石炭商事事件 最高裁判例昭和51年7月8日)。実際にこの事 案では、従業員に対して、損害額の4分の1を限度として損害の賠償を請求することが認められました。